生理の前って、イライラする、腰が痛くなる、胸が張るなど不快な症状が現れることが多いですよね。これは月経前症候群やPMS(Premenstrual Syndrome)と呼ばれるもので、月経(生理)の3〜10日前から起こる心や体の不調の中でも、月経がくると症状が弱まり、やがて消えていくものをいいます。なんと月経のある女性の80%以上が何らかの不快な症状を感じているとも言われています。
医学の中には、中医学(中国の伝統医学)というものがありますが、中医学では体を大きく「気・血・水(き・けつ・すい)」に分け、五臓「肝・心・脾・肺・腎」の働きと体の陰陽とで総体的に絡めながら体の状態をみていくので、中医学的な考え方はホメオパシーを使う上でも相乗的に役立ちます。
そこで今回は、
●PMSの症状を中医学的にみると、どこがどうなっていると考えられるのか?
●その時ホメオパシーを始めとする自然療法で何ができるのか?
●レメディーは何を選べばいいのか?
などを書いてみたいと思います。
PMS(月経前症候群)の症状
◎心の不調
・イライラと怒りっぽくなる
・涙もろくなる
・情緒不安定
・集中力がなくなる など
◎体の不調
・胸が張る(痛い)
・下腹部痛
・腰痛
・頭痛
・むくみ
・倦怠感
・肌荒れ など
大きく分けると、情緒不安定などの心の問題と体の痛み、そして重だるさなどが主な症状ですね。
中医学的にみた原因・状態
あなたの症状はどれ?
精神的な不調や”張る痛み”がある場合
○肝気鬱滞(かんきうったい)
イライラしやすい、下腹部や乳房が張る、片頭痛、脇腹がシクシクと痛むなどの症状は肝気鬱滞という状態にあります。専門用語ではありますが、文字から連想できるものもあると思いますので、そのまま使いますね。
先にも少し書きましたが、中医学では体を大きく「気・血・水」に分けて考えます。
この中でも「気」は、私たちの想像する「気分」のようなものももちろん含みますが、むしろエネルギー的な働き(気功をイメージすると分かりやすいかもしれません)を意味し、私たちの体を外部から守ったり、体を動かしたり温めたりという、あらゆる働きに関与していると考えられています。そして忘れてはならないのは「血と水(体の栄養分と水分)」は「気」によって全身に運ばれるということです。
また、「肝」という臓(この場合も西洋医学での肝臓と言うよりも、肝という働きを意味します)は、血を蓄え、気と血を全身に巡らせる働きをすると言われていますが、ストレスによる影響を受けやすく、ここが不調になると怒りの感情に結びつきやすいという特徴があります。また、生殖器は肝経絡上にあるので、精神的な影響を受けやすいというのもポイントです。生理のストレスにより「肝」が不調になると「肝気」の巡りが悪くなり気が滞ってしまい、イライラと怒りっぽくなったり情緒不安定な状態へと繋がっていきます。「張るような痛み」は、気の滞りがあるときに見られると言われています。
”キリキリと刺すような痛み”がある場合
○瘀血(おけつ)
何らかの原因によって、血の巡りが悪い、血の質が悪い、血管の状態が悪い、などにより「血」が滞った状態を瘀血といいます。
生理における瘀血の特徴としては、キリキリと刺すように痛む、痛みが移動せず同じ場所が痛む、経血が暗赤色で血の塊が出る、などがあります。原因は様々ですが、肝の不調から気の巡りが悪くなった場合も、気が血を運ぶため、「気の巡りが悪い」=「血の巡りが悪い」という状態を生み、瘀血へと繋がりやすくなります。
倦怠感や浮腫みなど重だるさがある場合
○痰湿(たんしつ)
体が重だるい、浮腫みが出る、肌のトラブルなどは「気・血・水」の中で「水」が滞ることで起こる症状で、痰湿(水滞)といいます。
これは主に、五臓の中でも「水」の代謝に関連する「脾・肺・腎」の弱い人に見られやすい状態です。脾気・肺気・腎気の少ない人は「水」の代謝不足も起こしやすく「水」が滞り、それは川の流れが滞るのと同じように澱んだ水となり、ひいては熱を持ち炎症の元にもなってしまいます。
PMSが起こる時は女性にとってどういう時期でしょうか
そもそも月経前は妊娠に備える時期
PMSは、排卵から月経開始までに起こりますが、そもそもこの時期は妊娠が成立した場合に備え、体が胎児の発育に必要な気・血・水を溜め込もうと準備をする時です。そのため、いつも以上に滞りやすくなることは容易に想像できますが、これが行き過ぎてしまうと不快な症状として現れてしまうのですね。
生理が始まると軽快します
ですから、生理が始まり排泄が進むと体の余剰なものが流され症状は軽快します。
生理は体のお掃除。どんなゴミが出てますか?
毎月訪れる生理は本当に鬱陶しいもの。でもこれがあるからこそ、女性は毎月体のお掃除ができています。どんな色の、どんなゴミが出てますか?毎月きちんと排泄されてますか?
身体が示してくれる症状は正直です。色が濃い、匂いがきつい、塊がある。これは身体に、代謝しきれない余分なものがありますよ、というサインです。あぁ、本当に面倒くさいなぁと思う前に、何が原因で上手く巡っていないのかを見つけてあげましょう。何十年もお世話になる大切な身体ですから。
自然療法で何ができるでしょうか
これらのことから、一言でPMSと言っても体で起こっていることは千差万別であることが分かります。現れている症状から、自分の体のアンバランスさや弱いところを知ることはとても大切。それにより各臓に親和性のあるハーブチンクチャーを摂るのも良いでしょうし、リラックス効果を期待できるハーブティーなども良いと思います。また嗅覚から刺激を与えるアロマテラピーは、好きな香りを芳香させるだけでも気を流す力は絶大。精神的な不調を感じやすい人にはぜひ取り入れてほしい療法です(ただし、ホメオパシーのレメディーを合せて使うときには注意が必要です)。他にも、気の豊かな場所を訪れる。好きな音楽を聴く。など、まず「気」が滞ることなく流れることを意識して過ごすことは、あらゆる症状を軽くするきっかけになると言えます。
レメディーは何を選べばいいでしょう
PMSに合うレメディは沢山あります。そして、そもそもの医学の成り立ちが中医学とは異なるので、中医学とレメディーが全て結びつくわけではありません。ですが、違った方面からみているとは言え、対象は同じ人体。ふむふむなるほどと、面白く共通点が見つかることも少なくありません。レメディーを、いくつかご紹介しますね。
月経前に乳房の痛みと腫脹があり月経が始まると軽減
○Lac-c.(ラック・カナイナム)/犬の乳
月経前の乳房の痛みと腫脹があり、月経が始まると軽減します。その痛みは接触や振動でひどくなるので、乳房をしっかりと支えずにはいられません。極めて低い自尊心と強い攻撃性があり、急に怒ったりします。まるで宙に浮いているかのような、変わった感覚も持っています。
経血量は少なく暗い色で、卵巣が硬化や腫脹、痛みがある
○Lach.(ラカシス)/南米の毒ヘビ・ブッシュマスター
経血の量は少なく色は暗い色で、左側の卵巣が硬化、腫脹し痛みがあります。頭痛は頭頂に圧迫感や灼熱感があります。いずれの症状も分泌物が排出されると軽減するという特徴があるので、生理開始とともにあらゆる症状が軽減します。取り留めもなくよく喋り毒舌、嫉妬深さも持っています。また、眠りに落ちる時や睡眠後に症状が悪化するという特徴もあります。ヘビのレメディーは血液との親和性が強いので、瘀血傾向の方には合っているのではないでしょうか。
生理による排泄が少ない(月経期間が短い経血量が少ない)
○Puls.(ポースティーラ)/セイヨウオキナグサ
初潮が遅かったり、無月経、月経周期が長い、月経期間が短い、経血量が少ないなど、とにかく生理による排泄が少ないのが特徴です。おとなしく穏やか、一人になるのを嫌い泣き虫さんです。症状がコロコロと変わりやすいという特徴もあります。
生理は、女性にとって身体の大切なお掃除期間でもあります。経血が多過ぎるのも少な過ぎるのも、ましてやあるべき年齢の時期に無月経であることは、過言ではなく大問題。気分も大きく影響されるだけに、きちんと整えていきたいところ。インナーチャイルドも当然影響してきますので、セルフケアで対応が難しいときには、ぜひホメオパスの力を借りてくださいね。