こんにちは、自然派獣医師&ホメオパスの今村香です。
ここ最近、温暖化とともに色々な感染症発生しては、世界をものすごい速さで巻き込んでいっています。1つの感染症が発生するたびに、マスコミやSNSでは、手洗い?うがい?マスクの推奨?の報道や、免疫力を高める乳酸飲料、サプリメントの広告が増えますね。
ではその、免疫力とは何でしょうか?
生物(中学生や高校生の頃に習ったことがある)の中に出てきた、外的侵入者から身体を守ってくれているシステムが免疫の基本です。教科書の中の言葉であったり、テレビ番組などから知識として知ってはいますが、実際に免疫力を感じるときはどんな時でしょうか?
例えば、風邪をひいて熱が出てやっと治ったこととか、怪我が化膿したけど治ったこととか、ぶつけた個所が痛くてあざになってから治っていった、ということですかね。
免疫力はほとんどが無意識の領域で、身体の中では主に細胞たちが活躍してくれています。外的侵入者を追い出すのも、傷を治すのも、異常な細胞増殖を駆逐するのも体の中の細胞たちです。でもそれだけではなく、もう一ついる主役を上手に使って最強な自分を作っていきましょう。
免疫システム
哺乳類の体には主に3つの防御システムが存在しています。
1.防御システム
2.免疫システム
3.神経システム
その中で一般的に免疫力といわれているものが免疫システムです。ですが、それだけではなく、他の防御システムや神経システムと複雑に関与しあっています。
1.構造上の防御システム 皮膚や粘膜、マイクロバイオーム
そもそも、身体には簡単に外界の異物が入ってこれないような構造になっています。身体の中で外的環境と接する場所は、皮膚と粘膜です。
皮膚は一番外側に角質があり、紫外線、温度、湿度などから内部の細胞を守っています。てのひらや足の裏といった場所はケガをしやすいところなので、角質層も厚くなっています。ちょっとの傷では細菌や寄生虫が体内に入りこみにくくなっています。
一方、口や鼻から始まり、胃、大腸そして肛門までつながっている内側のトンネルには粘膜があります。
口呼吸や鼻呼吸で取り込んだ外気にはたくさんの異物が含まれています。ホコリ、花粉などのほかに、数多くの細菌やウイルスも含まれています。ですので、口の中には扁桃というリンパ組織が沢山存在しています。このリンパ組織によって外的侵入者の情報をとらえて、記憶して、免疫細胞の成熟に関係していきます。
喉や気道粘膜は分泌液を多く分泌して、洗い流すように異物を排除しようとします。しかもその分泌液には抗菌作用をもつ低分子たんぱく質(リゾチームやラクトフェリンなど)や免疫グロブリンも含まれています。これらは細菌の細胞壁を壊していく酵素で、細菌を自滅させていきます。
なんとストレスによって、免疫グロブリンの分泌が低下してしまいます。そうすると、最前線での防御システムが弱くなってしまい感染に抵抗することが出来なくなってしまいます。
口や鼻を通り過ぎると、喉や気道や肺の上部の粘膜細胞には毛(繊毛)があり、異物を外に掃き出す、ほうきの役割をしています。ちりとりでゴミ箱に捨てるように、異物も外に出さないといけないので、クシャミや咳で外にぽいします。嫌がられる咳・くしゃみですが、防御上は大切な機能です。
そして、この皮膚と粘膜の上にはなんと私たちと共生している微生物の集合層があります。それがマクロバイオームといわれていて、私たちと共生関係にある細菌、真菌、ウイルスの集まりのことです。100兆個ものマイクロバイオームから産生される物質も侵入者を撃退してくれるのに役立っています。
皮膚や口腔内だけではなく、腸内にもマイクロバイオームは存在しています。皮膚には800種類もの細菌が存在していて、種の多様性があるほど肌のきめの細かく、毛穴が少ないことがわかってきました。
また、マイクロバイオームには、善玉と悪玉と日和見に分類することがき、アトピー性皮膚炎では悪玉の黄色ブドウ球菌が多く、それが痒み刺激につながっています。
免疫細胞の7割は腸内で病原体と接触して活性化していきます。活性化した免疫細胞は血流にのって全身へ渡っていきます。腸で感染が起きると、脳の不安感が増えたり、大腸をとってしまうと元気がなくなってしまうこともわかってきました。
2.免疫システム 身体の中で戦う細胞たち
そもそも、外的侵入者をうまく排除するには、自分と自分以外の物を区別しないといけないのです。
この区別をするものに抗原という印が役に立ってきます。ウイルスや細菌、私たちの細胞の表面や細胞内部には抗原というたんぱく質の目印が存在していて、それを見分けることで自己と非自己の区別をしています。
また、何事も始まりがあれば、終わりがないといけないので、免疫システムにもちゃんと終わりがあります。いつまでも攻撃をし続けるということは、今度は好ましくない反応で、病気の一因になります。
免疫システムの流れはまとめるとこのようになります。この中にリンパ球や白血球、抗体はどの細胞たちが複雑なかかわりをもって対応しています。
1.異物を見つける
2.免疫細胞に伝えたり、免疫細胞を活性化したり、免疫細胞を集めたりする
3.非自己の抗原を攻撃する
4.排除したので攻撃をやめる
異常な免疫システムには自己免疫疾患、免疫不全、アレルギーなどがあります。
自己免疫疾患は、自分の細胞を攻撃し続け、免疫不全は身体に侵入した異物に対して認識できなくなり攻撃することが出来なくなります。アレルギーは通常は無害な物質に対して過剰な免疫応答を引き起こして正常な細胞を壊してしまいます。
また、免疫システムには大きく2つに分けられます。自然免疫と獲得免疫です。
自然免疫
自然免疫とは、私たちにもともと備わっているシステムで、異物を排除することができます。記憶することはしないので、いつでも即対応の形をとります。
白血球のうち、これらに深く関係するのが、好中球、好酸球、マクロファージ、NK細胞です。好中球は細菌を食べて消化し排除していき、感染した場所に真っ先に集まります。黄色い膿がこの好中球の死骸になります。
マクロファージは異物を食べて消化して、その抗原情報を司令塔のヘルパーT細胞に伝えていきます。
NK細胞はがん細胞などの異物を食べて排除していきます。これ以外にもサイトカインや補体などが関連しています。
獲得免疫
獲得免疫は生まれ持ったシステムではなく、一度体内に侵入した抗原情報を記憶して、二度目の侵入時に素早く対応できるようなシステムです。
非自己の異物を認識することから始まり、その異物に対しての攻撃方法を学び、記憶していきます。この時に活躍するのが、リンパ球や抗原抗体反応です。記憶するためにはある程度の時間が必要になります。
また、獲得免疫は特異免疫ともいわれ、病原体それぞれに応じた戦略をたてていきます。記憶することが出来るために、再び同じ病原体の体内侵入を許すと、今度は時間をかけずに素早い対応が可能になります。
3.神経システム 自律神経と副腎、ホルモン
哺乳類という生き物が誕生してから、命を守るために、体の中では複雑な関係を持たせてきました。
動物として生きていくために、自然の中では、常に気温と湿度などが居心地のいい状態であることは少なく、出来るだけ素早く状況を察知できることも必要になります。のんびり寝ていても危険を察知したら逃げなくてはいけなく、子育てをするにも、狩りをするにも怪我がなく獲物を取らないといけません。
一方、清潔な洗練された生活の中でも、私たち人間の五感–見る、聞く、感じる、匂う、触る、考えるなどから、脳が感じて情報を処理したあとで、身体に指令を出していきます。感じて指令を出すまでに、ほぼ自動的に一瞬のうちにおこなわれてしまいます。それが、陰の主役となる神経-副腎-ホルモンです。
脳の中の視床下部は自律神経の最高中枢の場所で神経系とホルモンを合わせて支配しています。副腎髄質は交感神経細胞から発生していることもあり、交感神経の興奮が直接伝わってしまいます。
自律神経
自然の中で、食べ物を捕獲する、繁殖活動を主体にしていた時代から、現代の情報を制する時代の変化の中で、実は常に感覚を使って脳機能を酷使していることが、ストレス過多につながっています。常に考えるということは、交感神経の緊張をずーっと刺激していることにつながっていきます。
一般的に、交感神経は、朝目覚めてからが優位になっています。車の運転でのアクセルを踏み込むように、身体が素早く反応するようにエネルギー消費を高め、心臓の動きを高めて、血管を収縮させて血圧をあげ、身体の隅々まで血液がたどり着けるようにします。それは、ホースで勢いよく水を出して遠くまで届かせようとしています。また、酸素の取り込みを増やすために、気管を広げ呼吸をしやすくします。
活動しやすくする一方で消化機能は抑制してしまいます。周りをよく見えるように眼の瞳孔を開き気味にして、目でとらえる情報を多くします。動き出すということはケガもするかもしれません。怪我をすれば、血を素早く止める必要が出てきますし、細菌や寄生虫などの病原体の侵入が容易くなります。そのために、貪食作用のある免疫系が活性化し始めます。いわゆる、好中球やマクロファージといったものです。
その一方で、リラックスしているときや寝ているときは副交感神経が優位になります。五感の働きを抑えて、消化機能の働きを刺激します。排せつを促し、栄養を蓄えるようにしていします。心拍数も呼吸も穏やかになります。このようなリラックス時にはT細胞などのリンパ球たちが活動を増やします。
交感神経と副交感神経のどちらが長時間優位になりすぎても、体調は不良になります。体内では白血球自体は5~6割が好中球などの交感神経系、3~4割がリンパ球の副交感神経系であると良いバランスなのですが、どちらかに偏りすぎても病気になりやすくなります。
例えば、好中球などが多すぎると、細胞をやっつける活性酸素や酵素が強すぎて、糖尿病や潰瘍がふえたり、ウイルスに対する抵抗性が低くなったりします。逆にリンパ球が増えすぎるとアレルギーや喘息といった問題にもつながります。
自律神経の場合も、免疫にかかわる細胞の割合も、バランスが大切ということです。
副腎
もう一つ、副腎機能が関わってきます。副腎は多くのホルモンを合成・分泌しているところで。ストレスホルモンともいわれているように、多くのストレスから影響を受けてしまいます。
緊急時に脳が感知する(つまり、目で見る、耳で聞こえてくる、肌感覚で伝わる、気配を察知するなど)と交感神経の刺激を受けて直接支配の副腎髄質のアドレナリンが分泌されて、血圧上昇やエネルギー放出状態を作ります。このエネルギーというのは糖のことなので高血糖状態になります。これが強く出すぎると、パニック症やイライラ、睡眠障害となって現れていきます。
一方で、刺激を受けた脳は視床下部に指令を出して、副腎皮質ホルモンの分泌を指示します。よく知られているステロイド剤というのは、ここから出ているホルモンの一種を薬剤にしたものになります。
副腎皮質ホルモンは身体の機能を保つために最も重要なホルモンになります。エネルギーの調整(血糖の調整)、血圧を保つ、炎症を抑える、体内のコレステロールやタンパク質の産生などに関わってきます。また、腎臓に影響を及ぼして水分やミネラルの保持に影響します。
あと、性ホルモンの基になるホルモンも作っています。更年期では少なくなる女性ホルモンの補完をしています。
ストレスなどでコルチゾールが多く分泌されると、免疫細胞であるマクロファージは活性化して貪食機能が高まりますが、リンパ球の活動は抑制され、バランスは崩れてしまいます。つまり、感染症に対して戦うことが抑えられてしまったり、ガンに攻撃しにくくなり、花粉症などのアレルギー疾患が増えることにつながります。
免疫力をあげるときに、防御システムや細胞の免疫システムは、意識的に活性化しにくいところですが、影の主役である、自律神経や副腎を整えることはできます。
頭で考え込んでしまう人、空気を読みすぎる人、刺激的な欲求に従って生活をしている人、ぼーっとだらだら過ごしている人、例え上げればきりがないですが、たぶん多くの人が偏った生活を送っていると思います。
情報過多になっている現代の生活では、どうしても交感神経が優位になりやすくなります。しかし、交感神経がたちすぎても、副交感神経が優位になりすぎていても、身体から見るとあまり良い状態ではありません。上手に切り替えられるように、バランスが大切になります。
陰の主役を引き立てる方法
適度な運動
副交感神経を高めてリラックス効果を生み出します。しかも適度な運動を定期的におこなっていると、全身の血流の流れもよくなり、免疫細胞が活性化して免疫力を高めます。しかし、激しすぎる運動は粘膜での免疫グロブリンの分泌を低下させてしまったり、虚血状態を作ることで免疫低下をおこしてしまいます。
お風呂につかる
入浴を10分以上とることで、リラックス効果がたかまります。
睡眠
睡眠中に分泌される成長ホルモンによって、免疫細胞も刺激を受けます。十分な睡眠が確保されないと、ウイルス感染した細胞を破壊するNK細胞の活性が落ちていきます。NK細胞はがん細胞の除去にも関わる大切な免疫細胞です。うまく睡眠をとれないと、交感神経から副交感神経の切り替えもうまくいかなくなります。
笑うこと
笑顔を張り付けるだけでも変わるといわれています。笑うことによるリラックス効果も得られて、NK細胞が活性化することによるがんや感染症に対する防御も上がります。
温める
首回りと腰回りを温める。これは、副交感神経のネットワークを作っている場所を温めて、強制的に交感神経を鎮めてバランスを整えようとします。睡眠前におこなうとより良い入眠に入りやすくなります。冷え症の人は交感神経が高まったままで血管が収縮していることがおおいです。最近の生活スタイルでは情報過多なので、どうしても交感神経が優位に立ちやすくなります。電磁波による影響も少なくないです。
食事内容を考えよう
腸脳相関といって、腸と脳はホルモンや自律神経を介して、とても密接にかかわっています。。腸内環境を整えることは、免疫を刺激するうえでも、自律神経を整えるうえでも大切なことです。腸を健康にするには、大腸まで食べ物が送られて腸内細菌のえさになる必要があります。炭水化物、タンパク質、脂質といった三大栄養は上部消化管で処理されてしまうために、大腸に必要なのは食物繊維になります。いわゆる和食や地中海料理を積極的にとるようにしましょう。