ホメオパシーを実践していくなかで時折印象的な出来事として現れるのが、
家族内で同じレメディが必要になるケースです。
父母、子ども、時にはペットを含めた家族全体が、異なる症状・異なる年齢であっても、同じレメディで改善していく。
これは単なる偶然として片付けられるものではなく、
自然療法・生命観の領域では、はっきりと理論的背景が存在します。
東洋医学には「母子同服(ぼしどうふく)」という概念があります。
母親と子どもは身体のエネルギー・体質・情動の影響を深く共有しているため、
母親の体質改善が子どもの改善にもつながる、
あるいは同じものが必要となるという考え方です。
ホメオパシーは西洋由来の体系ではあるものの、
「身体は単独ではなく、関係性の中で反応する」
という原理は共通しており、エネルギー医学的視点からも大きく符合します。
最近、我が家でもその「共鳴」を象徴するような出来事がありました。
娘の月経に見られた小さな乱れと、レメディ選択のプロセス
ある日、娘の生理が遅れ、ようやく来たものの量がとても少ないという相談を受けました。
生活の変化やストレス、身体の成長段階などさまざまな要因が考えられますが、
ホメオパシーでは、目の前の症状だけでなく、感情・気分・行動パターン・思考の傾向を総合的に観察して処方します。
今回候補として挙がったレメディは Sep. と Kali-c. の2つ。
ちょうど同じタイミングで、私自身が家事に追われ疲労感を抱え、無感情気味になりつつあり、Sep.を必要としていたし、
腰の重だるさが出ていたため、普段から相性のよい Kali-c. も服用していました。
3000種類あるレメディの中でこの二つの候補が上がった時点で、
お互いに何かしらの深い治癒が見られるのではないかと想像できます。
Sep.──「役割と疲労」が引き起こす閉塞感のレメディ
Sep. は、ホメオパシーを学ぶ人が早い段階で出会うことの多いレメディのひとつです。
特徴を一言で表すなら、役割疲れから来る情感の枯渇
• 家族・仕事・学校・部活など「求められる役割」を頑張りすぎてしまう
• 本当は愛情があるのに、疲れによって表現できなくなる
• 負担の蓄積→感情の遮断→無関心の仮面
• 1人の時間・距離・自由を欲する
• 月経不調・PMS・骨盤周りの問題・冷えなどとの関係も多い
Sep. の人は「冷たくなった」のではなく、燃え尽きてしまったがゆえに反応できないことが多い。
心の奥には愛情があり、投げ出したい気持ちと踏ん張ろうとする気持ちの間で葛藤していることがよくあります。
心の重さが軽くなり、停滞していたエネルギーが再び流れ出す
という変化が起き、行動面に自然に表れます。
本人の意志より前に、“もう一度動ける”という内側の回復が先に起きるのが特徴です。
Kali-c.──「責任感と不安の間にいる人」の背中を支えるレメディ
もうひとつの候補だった Kali-c. は、Sep. と混同されそうでありながら、まったく異なる性質を持っています。
• 義務感、責任感、真面目さ
• 期待に応えようとする強さ
• 弱みを見せられない
• 不安を抱え込みやすい
• 背中/腰/横隔膜の部位の症状が多い
カリウム族のレメディに共通する「真面目さ」と「防御」が典型的ですが、Kali-c. は特に、
倒れないように踏ん張っている人物像
がよく現れます。
感情を乱されたくない、弱さを見せたくない、崩れたら立て直せない──
その背景には深い不安感があるため、本人の堅さ、頑固さ、融通のなさは必死の自己防衛でもあります。
娘に処方したレメディは
選択の第一段階は、身体的特徴と症状の照合ですが、今回のように候補が複数挙がる場合、
どのレメディの人物像が、その人らしさと最も一致しているか
を考慮して、最終的な判断をします。
娘の場合は 気持ちの冷め 人との距離感 投げやり感と反発の狭間で揺れる感じ
など、より Sep. に象徴的な心理傾向が見えてきたため、
Sep.を採用することにしました。
母親が無理を重ねている時期に、子どもが同じレメディの適応状態になる──
この現象は臨床でも珍しくありません。
家族という共同体は、単なる個の集合ではなく、心身のエネルギーを共有する“場”としての影響の中に生きているからです。
娘は Sep. をとった後、
「最近、部屋が綺麗だと思わない?」
と嬉しそうに話してくれました。
これは単なる“やる気アップ”ではありません。
Sep. は激しく身体を動かすことを好み、細々とした動作が苦手
という特徴を持っています。
「片付けたいけど、できない」
という精神状態の中にいる人に対して「片付けなさい!」と注意することが、
無意味であるかということもおわかりいただけますでしょうか。
症状を観るのではなく、人を観る
今回のケースからもわかるように、
レメディ選択は最後は精神・キャラクターで決まるということです。
同じ症状でも、
• 投げやり・空虚感・役割疲れ → Sep.
• 真面目・責任感・不安・防御 → Kali-c.
というふうに、根底にある生き方のパターンが異なります。
ホメオパシーは、症状の一致だけでなく、
その人がどんな風に世界と関わろうとしているのか
どんな防御を使い、どんな形で傷つき、どう立とうとしているのか
まで見ていく療法です。
そして時に、親子や家族が同じレメディを必要とする瞬間が訪れます。
それは弱さの連鎖でも、病の共有でもなく、
同じ環境・同じ空気・同じ感情の場で、同じテーマを生きているということ。
月経そのものの改善がどう現れるかは、翌月まで観察する内容ですが、レメディをとった娘が
「部屋が片づけられるようになった!」
と喜んでいた姿を見て、何かが内側で動き始めていることを確信しました。
レメディをとり、本来の自分に戻り始めた娘の姿を見ながら、
母として、ひとりの人間として、同じテーマを私も生きているのだと実感しました。
ホメオパシーは、症状を消す手段ではなく、
ありのままの生命を生きるためのサポートです。
近い関係性の相手との間に起きる共鳴は、そのことを静かに教えてくれます。
症状の改善だけではなく、心が自分を取り戻していく過程が、
ホメオパシーの癒しなのです。
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「毎月憂鬱だけど、みんなこんなものだろう」と我慢したり、
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